畳の種類(部材)

畳は、大まかに言うと、「畳床」 「畳表」 「畳縁」 この3つの部材で成り立っています。

畳床

畳床は包丁で切断し、畳表・畳縁を縫着するものですから適する素材は限定されます。
現在一般に普及しているものには、一部特殊なものを除くと、
ワラ床・化学床・建材畳床の3種類があります。


・ワラ床

ワラ床は、よく乾燥させた藁を層になるように、縦横に積んで圧縮し、縫い上げて
つくられる。 ワラの質、配列の仕方、均等に圧縮してあるかどうか、縫い目の間隔、
裏の素材などによって品質の良し悪しが決まる。 たくさんの藁を使い、配列層を多くし、
縫い目間隔を細かくしたものが高級品とし、裏の素材にシュロを編んだ
シュロ裏などを使ったものが最高級とされる。
化学床と比較してワラ床の長所は、感触が良い、表替えを繰り返しても丈夫である、
復元力に富み、耐久性は実証済みである。
また、何よりも天然素材であり、吸放性の機能を持ち、室内の湿度調整役を
している事は科学的にも立証されている。

・化学床

化学床が考案されたのは1963年頃である。 一時は粗悪品が出回り、ユーザーより
不評を買ったが、JIS規格が制定されてからは品質も安定、
畳床生産量の3〜4割を占めているといわれていた。
化学床の主な素材は、ポリスチレン樹脂と発泡剤からなるポリスチレンフォームと
木材繊維を原料とするインシュレーションファイバーボードで、
わら層で上下をはさみワラサンド床として使用する。
ワラ床と比較した場合のメリットは、軽量なので、運搬や、敷き込みが楽なこと、
ダニの発生が若干低いことなどがあげられる。
一時期ワラ床にいちばん近い床として普及されていたが、
現在では建材畳床の普及に押され減少傾向にある。

・建材畳床

建材畳床は1990年7月にJIS規格が制定された。
これによって、化学畳業界は永年の懸案であった粗悪品の規制が計られ、
独自の機能、メリットを持つ畳床としてその立場を確立したのである。
一時期この種類のメーカーは15社にものぼり、各々の製品開発に余念が無かったが
畳需要の減少とともに淘汰され、現在数社がその製造を担っている。
建材畳床の素材はインシュレーションボードとポリスチレンフォームによる
複合合体あるいは単体において使用されている。
比較的安価であり作業効率も良いことから現在一番普及している畳床と言える。
軽量、安価、作業性のよさ、虫の付きにくさ等のメリットがある反面
ワラ床に比べ耐久性で劣るのは仕方のないところ。
近年、建築コスト低減を主因にして30mmに満たない薄い畳床が
多く見られるようになったがその多くは建材床に分類されるものである。
安価に流通する薄畳には耐久性に著しい問題のあるものが多いが
補強材を使うなど品質向上のための製品開発にも余念が無い。

化学床は、大昔から畳といえばワラ床が当たり前だったものに
原料としてワラにプラスして工業製品が使われるようになった段階で
ワラ床と区別する意味で制定された呼称だと推察できるが
JIS規格上はワラが使われている畳床A5901とワラが使われていない畳床A5914に二分される。
また近年、畳床の原材料に使われるポリスチレンフォームの中では
スタイロフォームが最も普及しているのでスタイロ畳とかスタイロ床の呼称が良く使わる。
スタイロフォームは化学床の他、建材畳床にはいくつかの形で構成部材として使われるので
この呼称は特定の畳床を指すものではなくスタイロフォームが使われている畳や畳床の総称である。
畳床を特定する場合は建材U型、建材V型、スタイロCタイプ、スタイロGタイプなどの呼称を使う。

畳表

近年はい草以外の原材料で作られる畳表も普及し始めているが
農業生産品に分類されるい草畳表に対しこれらは工業生産品であるため
メーカーごとに品質は単一的である。
ここではい草畳表についての説明のみを記載する。


畳表はい草を緯糸に、麻糸や綿糸などを縦糸として織られる。
そこで畳表の良い悪いはい草、糸、織り方の3つの要素によって決められる。
質の良い草にはそれに応じた糸が選ばれるが、糸によってランクが上がる畳表もある。


・い草について

い草は、湿地に自生する多年生植物。
現在は熊本を主産地に、福岡、高知、広島、岡山などで栽培されている。
七島い(三角い)と区別して「丸い」と呼ばれている。
植え付けは12月真冬、刈り取りは7月の真夏。そして、染土という特殊な粘土質の
泥の中につけて染め、乾燥し選別したものが畳表の原料となる。
一枚の畳表を織るのには、およそ4,000〜5,000本のい草が使われ、その質、長さ、色調が
畳表の品質を決める重要な要素になっている。
良い草の条件は、茎に変色や枯れ込み、折れや傷、羅病がなく根元から先端まで
充実していること、一本一本の太さや色がよく揃っていること。そして、一般的には
長い草を使ったもの程、品質の良い畳表となる。 これは根と、先端をのぞいた
良い部分が多く得られる為である。


縦糸について


縦糸には大きく分けて麻糸と綿糸がある。麻の方が強く、しっかりと織り込める為、
肉厚で、配がそろって谷がせまい畳表が作られる為、高級品に使われる。
特にマニラ麻は最上級、その他にラミー、ジュートなどがあり、綿と混ぜて使う
こともある。 また通常一つの配につき二本の糸を織り込むところ、二本づつ計4本
使う二本芯(二本経)の方法もあり、いずれも高級品用である。


・織り方について


織り方は、い草の使い方により種類があるが、
現在はほとんどが機械織りとなっており、手織りは貴重品化している。
畳表の一目に縦糸が二本入る織り方を諸目(引目)織り、一本入る織り方を目迫(目積)織りと呼ぶ。
諸目織りの畳表は縁付き畳に、目迫織りは縁無し畳に使われるのが一般的。
色違いのい草をうまく織り込むことによって模様を出す御所表はある程度の歴史を持つが
近年はデザイン性を重視した綾織などの織り方も見られるようになった。


・青表(琉球表・七島い表)

青表(琉球表・七島い表)はカヤツリグサ科に属する多年生草木、七島いを
原料として作った畳表で、七島いは琉球い、三角い、豊後いともよばれ、
い草の断面が丸いのに対し三角形の断面を持つ。
これを半分に割いて乾燥させ(泥染めはない)、選別した上で麻糸を縦糸に織られ、
伝統的には目迫織りだが、一部、諸目織りもみられる。
この表は耐久力や火気に強い為、昔から柔道畳や農家作業場、
商家の帳場などに縁無し畳として使われていた。
基本的には手織りである為一般的な丸い表に比べて価格は高い。
主産地は大分県であったが近年流通しているもののほとんどは中国産である。

近頃、デザイン的な目新しさから時折見られる縁無し半畳の市松敷きには、
目迫織りの畳表が使われるのが一般的だが、
価格面の理由で、普及しているのは丸い草目迫織りの畳表である。
それらを総称して「琉球畳」というのは間違いであり
本来琉球畳とは青表を使った畳のことである。


畳縁


畳の発達は畳縁によって座る人の地位や、身分を規制するために進歩発展してきたと
考えられる。 身分による畳縁の使用規定が「海人藻芥」(応永27年(1420))に
記されている。 このような規定は時代とともに崩れ、守られなくなっているが、
現在でも神社、仏閣あるいは客間、居間、納戸などと部屋の格式に応じて
畳の縁を決めたりするのは、この名残りなのかもしれない。

畳縁は、絹、麻、木綿、化学繊維などを材料として織られ、または交織となって
各種の色の無地物や、柄物が作られる。
畳縁には大きく分けて、無地縁と柄縁がある。無地縁とは色縁のことで、
茶、黒、紺、鶯、などがある。 柄縁とは昔ながらの七宝柄、立枠柄などの他に
亀甲柄、菱柄、梅柄やその他オリジナルな柄も出回ってきた。
近年は畳縁の織機もコンピュータ化が進み化学繊維を素材にした
新しいデザインが次々に発売されている。


紋縁は、仏教の伝来と共に朝鮮より渡来した美術工芸品のひとつである織物を
禁裏の御座畳に用いたのが始まりとされている。
現在は寺院で使われることが多いほか
茶室の畳には無地縁を用い床の間の縁は紋縁にして、
部屋の広さと床の大きさによって、大紋、中紋、小紋等を選ぶ。
一般家庭の床の間が畳敷きの場合も紋縁を使うことがある。