たたみ耳寄りな話

その1

先日、面白い話を耳にしました。
横浜市内のある小学校の校長先生のお話です。
近年「切れやすい子供」がよく話題になりますが
畳の上で育った子供は切れにくいというのです。
もちろん科学的に証明された内容ではありません。
ただ、長年子供と関わってきた校長先生が
様々な環境で育った子供たちを観察した上で導き出された経験談です。
畳の素材の風合いに拠る優しさ感や感触の柔らかさ、
ベッドに寝るより畳にふとんを敷いて寝たときに感じる空間の広がり感などが
子供の成長に少なからず良い影響を及ぼすのではないでしょうか。

一方で、椅子と畳に座った子供たちにそれぞれ同じテスト問題を出題したところ
畳に座った子供たちの方が回答率が高いという実験結果があります。
畳に座ることで心が落ち着き、集中力が高まった結果と考えられます。




その2

北九州市立大学国際環境工学部の森田 洋先生が
畳表の主原材料であるイ草について色々な研究発表をしています。
住空間において畳が様々な役割を果たしていることを伺わせる内容です。
日本独自の文化として受け継がれてきた畳を
生活スタイルの変化を理由に廃れさせてはいけないと再認識させられます。

森田洋先生のプロフィール


神奈川県畳工業協同組合主催のセミナー




その3

近年、和室が減る中で縁無し半畳の市松敷きが流行っています。
流行の主因は洋風スペースにも違和感のないデザイン性だと思います。
  
縁付畳に比べ高価な縁無し畳ですが
住宅における畳が減ったからこそなのでしょう、
多少高価でも気に入ったものを使いたいというお客様は少なくありません。

さて、それではこの縁無し半畳市松敷きの実用性はどうなんでしょう?

昔は縁無し畳に使われる畳表は青表(琉球表)が一般的でした。
青表はとても丈夫ですが、特に高価なため、近年は縁付畳に使われるのと同じ
丸い草を使って青表と同じ目迫織りにした畳表が使われるのが一般的です。
巷では縁無し畳を総称して「琉球畳」と呼ぶことが多いようですが
本来、琉球畳とは青表(琉球表)を使用した畳のことで
丸い草を使用したものは例え縁無し畳であっても琉球畳とは言えません。
(沖縄県独特の畳表を使用した畳を琉球畳と呼ぶこともあるようです)

畳表は織物ですから縦方向には滑りにくく横方向には滑りやすいという特徴があります。
掃除機やほうきは畳の目に沿って、というのはそのためです。
畳の敷き方は室内での人の動線を考え、傷みにくさも考慮して決められます。
市松敷きはこの動線に逆らう場面が多くなりますから痛みやすい敷き方と言うことが出来ます。
また、幅方向に強い筋をつけて折り曲げていますので
裏返しは出来ない場合がほとんどです。

家族が集まる居間のように、人の出入りが多く畳が傷みやすい条件のお部屋に縁無し畳を敷く場合
丸い草目迫織り表使用の普及タイプの縁無し半畳市松敷きは
残念ながら、縁付畳より高価でありながら使用条件によっては痛みやすいというのが現実です。
天然素材にこだわるなら青表を使用した一畳ものを敷くのが丈夫で傷みにくいのですが
青表を使用する縁なし畳は高価なだけでなく30ミリ以下の薄い畳には不向きなため
丈夫さと半畳市松敷のようなデザイン性を求めるなら
い草のような風合いはありませんが和紙表や樹脂表を使うという選択肢があります。

ご注意いただきたいのは縁無し畳は表替え等の維持費も縁付き畳に比べ高くなりますのでお忘れなく!

これから縁無し半畳市松敷きをお考えのお客様は、あとで後悔する事がないよう
見た目だけにとらわれず実用性も考慮して決めていただくことをお勧めします。

(因みに上の画像は当店の施工例です)




その4

毎年春を迎えると街にマスクをした人を多く見かけるようになりますね。
そう、すっかり嫌われ者になった感のあるスギを中心とした花粉が悪さをする
花粉症の人が近年劇的とも思えるくらい増えているように思います。
首都圏では約40%の人が花粉症だとするデータもあるほどです。
ところが、
最近気づいたのですが、組合の会合などで多くの同業者と顔を合せるとき
花粉症の季節にもかかわらずマスクをしている人がほとんどいないのです。
花粉症は一種のアレルギー症状で
その原因は遺伝や様々な要因による免疫力低下等が考えられているようですが
どうやら都市部で患者発症率が高いとういう報告があるようで
生活環境との関わりも否定できない事実のようです。
畳(表)が窒素酸化物等の化学物質を吸着し、
室内の空気を浄化するという研究結果が発表されてから久しいですが
畳職人の仕事環境は埃まみれになることも珍しくない一方で
毎日新しい畳に触れることで科学物質に対して環境浄化された空間を生み
知らず知らずのうちに免疫力が高まっているのかもしれません。
もちろんなんの科学的根拠もない憶測ですが
エコという言葉と共に高気密化住宅がもてはやされる時代にこそ
天然素材の畳が果たす役割が大きいように思えてなりません。




その5

とあるラジオ番組に出演されていたゲストの方が
最近の日本人は昔に比べ我慢強く無くなったと話されていました。
確かに「そのとおり!」と頷ける話ではあったのですが
面白かったのはその大きな理由のひとつとして
洋式トイレが普及して和式トイレが廃れたため
しゃがむ(踏ん張る)機会が無くなったためだというのです。

同じようなことは和室が廃れて正座をする機会がめっきり減った
ということにも当てはまるのじゃないかと思ってしまいました。

昔ながらの日本人の生活スタイルには我慢強さや集中力を高める
独特の文化があったような気がしてなりません。
生活の洋風化が進み、和文化が普通ではなく特別なものとしてとらえられ始めていることは
もしかしたら悲しい現実なのかもしれません。




その6

当店では一般住宅の畳には一部の例外を除いて国内産の畳表を使用しています。
畳表全体に占める中国産の流通割合が国内生産を圧迫するほどの割合に達し
中国産の価格動向が畳表全体の相場を決めるとも言われています。
近年その品質も昔に比べ向上したため、均一でばらつきがないのを
良しとする工業製品を日常的に見慣れてしまった目で見ると
見た目の綺麗さでは同価格帯なら国内産に勝るとも劣らないのが普通になりました。
ただし、同じ中国産でも産地等によって耐久性にばらつきがあるのもまた事実で
個人的には日常的に使用するのは気が引ける部分があります。
安心感に対する不安イメージもいまだに払拭出来ません。
国内産にこだわる理由はもうひとつあります。
それは自給率の問題です。
畳表の消費地は畳が日本独自のものですからその大部分が日本です。
その生産をいくら価格的に有利だからといって国外に頼るのはいかがなものでしょう?
万が一輸入がストップしたら、、そう考えると空恐ろしいです。
畳の需要が年々減少傾向にある中、国内畳表産地の窮状は良く耳にしますが
材料自給率の低下は将来的に畳産業全体の衰退を示唆してるとさえ感じます。
畳に関わる者の一人としてこのままで良いのか?という気がします。




その7

建築現場に行くと若い大工さんが
機械工具を使って手際よく作業を進める光景を目にすることがあります。
今の建築工法で上手に機械を使うことは必要不可欠なんだろうと感じます。
実は畳にも同じことがいえる場合があるのです。
職人が好むと好まざるとを問わず、20ミリにも満たないような薄い畳や
手縫いでは仕上がりが良くない材質の畳が存在するからです。
昔ながらのわら床とい草表を使う畳であれば熟練した職人が
手間暇掛けて手縫い作業をすることで機械作業では絶対望めない
しっかりとした仕上がりを実現できますが
そういう技術が通用しない畳が少しずつ増えてきています。
ホンモノの畳が少なくなってきたのは建築工法の変化や建築コスト削減が主な理由ですが
畳職人も上手に機械を使いこなさなければならない時代なのです。
しかしながら素材や規格が変わっても畳は畳です。
基本通りの工程を踏んで、部屋ごとに違う寸法にピタリと合わせた
畳を仕上げるという点では昔と何も変わっていません。
技術や労力を放棄して機械に頼るのではなく
技術を応用するために上手に利用するのが畳の機械だと考えています。




その8

先日、畳の寸法を直してほしいというお客様から電話がありました。
早速来訪して畳を拝見し、お話を伺ったところ
ご主人が数年ごとに転勤を余儀なくされるお仕事だそうで
その都度賃貸住宅に引っ越しをされているのだそうです。
前任地のお住いでフローリングの床が冷たくて寒いため
近所の畳屋さんに洋間に敷くための畳を作ってもらったのですが
その畳を引っ越し荷物と共に運んできてみたものの
今回ご入居されたお住いのお部屋にうまく収まらないので・・とのことでした。
その昔、江戸では畳は大家さんの所有(家の付属物)ではなく店子の所有物で
引っ越しするときは店子が家財道具と一緒に大八車で運んでいたそうです。
そんなお話をさせていただきながらお部屋に収まるよう加工させていただきました。
畳の機能性とご自身の畳に対する愛着がうかがえるエピソードです。




その9

畳替えに使う材料を選ぶ際、お客様が最も気にされることの一つが耐久性だと思います。
畳材料のうち畳表は畳の表面部材となりますので傷み具合がはっきり目に見えます。
畳の表面の痛みは主に摩擦によって進行します。
これに対し畳床は普段目に触れませんので傷み具合は踏んだ時の感触や
凹み、あるいは寸法の大きな狂いなどが表面上の判断基準となります。
昔は畳床の原料のほとんどが稲ワラでしたから
新しい時は踏んだ感触が固い畳床は年数と共に徐々に柔らかくなり
畳替えの都度補修を重ねながら、ものによっては50年以上使えるものもありました。
畳床の痛みは主に荷重と湿度環境によって進行しますが
近年、建材畳床が広く普及してきたためワラ畳床とは違う原因で痛みが進行することがあります。
元々建材畳床はワラ畳床より耐久性では劣りますが
畳製作は縫着作業が基本のため、建材畳床は素材の性質上
表替えや裏返しを繰り返すことでも傷みが進んでしまいます。
価格、衛生面、作業性など様々な理由で普及してきた建材畳床ですが
こと畳床の寿命に関しては昔とは認識を変える必要があるようです。
寿命の長いワラ床が近年の住宅構造に適さないケースがあるのもまた事実です。