畳の寸法について

時々、「畳の寸法ってみんな同じじゃないんですか?」と、きかれます。
実は、畳の寸法は、一枚一枚みんな違うのです。
例えば、部屋の入り口の畳が痛んでしまったからタンスの下の畳と入れ替えよう
そんなことをしてもなかなか上手く収まらないのが普通です。
畳を別の部屋に敷こうとしても綺麗に収まることは希です。
言い換えれば、部屋の大きさはそれぞれ微妙に違うということです。

分かり易いように、関東では標準の、いわゆる「関東間サイズ」で説明します。
よく、「間口一間」とかって、言いますよね。
この一間というのは、曲尺で6尺、つまり1818mmです。
一尺は303mm、一寸は30.3mmということになります。
在来建築和室の場合、一般的には『真壁』といって壁面に柱が見える構造になっています。
例えば6畳間の場合、部屋の大きさは(二間)×(一間半)です。
しかしこれ、実際には部屋の両隅の柱の芯から芯までの距離です。
これに対し、和室の床面積(畳敷き部分)は、柱の内法ということになります。
柱の太さが4寸ならば、{(1818×2ー60.6×2)×(1818×1.5ー60.6×2)}
これが6畳間の床面積(畳敷き部分)となります。
上の式から分かるように同じ部材、同じ工法で造られた部屋でも
4.5畳間より6畳間のほうが、6畳間より8畳間のほうが畳は少し大きくなります。
ところが、現実の部屋の寸法はこんなふうに正確ではありません。
なぜなら、家というものは地面の上に現場で組み立てられていくからです。
図面どおり、一ミリの狂いも無い建物など存在しません。
私は、四隅がすべて寸分の狂いも無い直角、四辺がすべて正確に直線
というような部屋にお目にかかったことがありません。
その上、上記のように柱の太さや、その他の部材、2×4やプレハブなどの建築工法
によっても部屋全体の寸法は違ってくるのです。

そこで、新築住宅などにつかう新しい畳を作る時には、
必ず部屋の採寸と正しい割付が必要となります。
部屋の寸法を正確に測り、一枚一枚の畳の寸法を決めるのに必要なのは、
四隅の角度(直角に対する狂い)、4辺の距離、4辺のくせ(まがり)
ということになりますが、これらを求めるために様々な採寸方法があります。
正確なサイズの畳を製作するためには正確な採寸が前提となりますが
あらゆるシチュエーションで万能な採寸方法はありません。
近年、その手軽さからレーザー光線を使う採寸器が普及して来ましたが
これとて頼りすぎると良い結果を得られないことがあり
採寸理論をきちんと理解したうえで他の方法と組み合わせて使えることが大切です。


上で「関東間サイズ」という言葉を使いましたが
和室のサイズには同じ畳数でも関東間より大きい京間、中京間、
関東間より小さい団地サイズ(俗称)などがあります。
(高度成長期に建設された団地に多く見られることから団地サイズと呼ばれていると考えられます)
近年、建築工法が多様化したためお部屋の大きさも多様化し、
畳の大きさによるこのような明確な分類は難しくなってきていますが
マンションの和室の畳は関東間サイズ標準より若干小さめ、
元々少ない京間、中京間はメートルモジュールの部屋でも時折り見られ、
大壁(壁面に柱が見えない構造)の部屋が増えたため昔に比べ僅かに小さい畳が多くなってきた
というのが首都圏では一般的なようです。

畳工事に使う材料は部屋の大きさで使い分けますが
材料の規格は関東間用、京間用にほぼ2分されており
一畳の大きさが1800mmX900mm未満の畳には関東間サイズ
それより大きい畳には京間サイズの材料を使うことにになります。
また、一部のお茶室など特殊な用途のお部屋には
長さが一間半などという畳が敷かれている場合がありますが
こういう場合、特別注文で材料を手配することになります。



〜 畳の厚みについて 〜

昔は畳の厚みは2寸(約60ミリ)、が当たり前でした。
畳床の素材はもちろん稲わらでした。
高度成長期以降、鉄筋コンクリート造の集合住宅が多く建築されるようになった頃から
わずかに薄い1寸8分(約55ミリ)という規格が増えたように思います。
さらに時代が進み、1寸(約30ミリ)という規格が登場しました。
当初30ミリ厚の畳は廊下畳とも呼ばれ、和室に敷き込むためのものではなく
廊下等の和室以外のスペースに敷くための畳として考案されたものだと思います
この頃までは畳床の素材は一部の化学床を除き、やはり稲わらが主流でした。
その後ボード等を重ね合わせて作られる建材畳床が開発され、
畳の厚みに自由度が増したため、建築工法の多様化に合わせ様々な厚みの畳が登場してきました。
今では10ミリ強から60ミリまで畳の厚みは実に多種多様です。

それでは畳にとって最もふさわしい厚みはどれくらいなのでしょう?
現状では耐久性、感触、機能性など畳本来の良さを併せ持つのは
やはり昔ながらの2寸というのがまぎれもない本音です。
60ミリまたは55ミリ厚の畳であれば使用環境に合わせた畳床の素材の選択肢も複数あります。

畳の厚みは建築によって作られた部屋の規格で決められてしまいます。
近年、高齢化が進んだことも一因にバリアフリーの住宅が増えていますが
一部でバリアフリー畳とも呼ばれる薄い畳はバリアフリーのための必然ではなく
建築コスト節約やスペース有効利用のための苦肉策です。

55ミリ以上が畳の厚みにもっともふさわしい、とはいっても
畳職人として薄い畳を完全否定するつもりは全くありません。
ただし、薄い畳は様々な工夫がされている現在でも厚い畳に比べ強度や耐久性で劣るため
使用する畳表のグレードが限定されたり、新畳への交換サイクルが短くなったります。
マイホームを購入または新築する際に畳の厚みまでを気にする方は皆無だと思いますが
稲わら床が主流だったころのように、畳床の寿命は30〜40年、
そういう時代はすでに過去のお話になってしまったようです。